ピリカ/ピリカ旧石器文化館+石器製作跡

今金にあるピリカ、国縫から内陸へ15分ほど走らせたところに
旧石器時代の石器製作場の遺跡が残されている。今は立派な展示
施設が備わり、その展示は素晴らしく充実したものとなっている。


写真はその発掘調査現場。緑の気持ちのよい草原だ。ここは過去に
2度訪ねている。石器に興味のなかった頃なら、おそらく5分で立ち
去ることが出来ただろう。石器しかないある意味マニアックな展示
内容でもあるのだけれど、誰が見ても良く分かるプレゼンテーション
は非常に好感が持てる。実際、その現場の爽快な光景を眺めると何度
訪ねても損はないと実感できる環境のよい場所だ。


ダム建設に際して発掘されたこの旧石器時代の遺跡からは19万点に
及ぶ出土品があるのだという。・・・19万点。一体誰がどのように
整理をつけたのだろうか。又は整理は進行形なのかもしれない。




石器の好きな私は石刃鏃文化が贔屓である。素材を求めた彼等の
石器は非常に美しい。大きな石刃など石刃核から一打で叩き出された
そのものが既に何かの道具になれそうな鋭利さを備えている。
スケッチに描くと非常に難しい類のものだ。鉱物的な多面性と微妙に
歪みくねる多様な面を持つ黒く透明なガラスを描くのだから。


ここの石器、基本は頁岩とメノウとなるらしい。メノウの産地でも
ある。メノウは非常に硬度の高い石で石器の素材に申し分はない
けれど硬すぎて製作は難しくなるらしい。黒曜石とは異なり色身は
それはそれで美しい。頁岩も品のある素材感はなかなか素晴らしい。



人類史によれは250万年前程から石器が登場している。先日の新聞では
350年前頃の野獣の骨に鋭利な切り口を発見するとニュースが載って
いた。何で切ったのか?石器の可能性があるらしい。そこまでの時間
スケールで眺める準備はないものの、北海道で確認できる2万年前後を
経る旧石器時代とは丁度陸続きとなっていた北方より動物達と一緒に
人間が北海道に渡って来た頃なのだろう。この頃、石器は既に一つの
完成したスタイルを持っている。



石器を見始めて最初に感動するのは「細石刃」ではないだろうか。

これは先日の北海道開拓記念館で催された石器つくり体験の際に偶然できた
それらしい一つ。細石刃をつくるにも色々な方法があったのかもしれない。
好きといいつつまだ何も詳しく知ってはいないので直ぐにボロがでるけれど。
細石刃用の石刃核は確か非常に小さい。刃は剃刀よりも小さくカッターの
追った先よりも小さなものすらある。その刃を木や動物の骨に溝を彫り
差し込んで列を成し大きな刃物に見立てる道具だ。


石刃鏃文化でなくとも石器の材料は選ばなくてはならない。住まう場所が
必ずしも材料に恵まれていたわけではないだろう。とするとこの少量で
多様な刃物を形成できる手法は非常に有効だったに違いない。欠けたなら
そこ欠けた部分のみを交換すれば良くメンテナンス性は極めて高い。
2万年前の石器とは既にそのレベルの活用をしている。そこに至るまでは
それ相当の月日を要したに違いない。



石器の材料にはどんな石を用いていたのだろう?原石の展示より・・・

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今金のメノウ。硬度の高さが魅力。宝石になりそう。

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八雲の珪質頁岩。意外とマットな表情が好ましい。


赤井川の黒曜石。随分、縞模様が強い。


置戸の黒曜石。鉄分を含み赤の縞模様がある印象。


白滝産の黒曜石。赤みもあるけれど奥の真黒、世界遺産
登録しようかという世界的な黒曜石の産地を代表する素材。


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展示スペースは小さいがその内容は充実している。奥のスペースは
その種類や工法等の案内ではなく出土した中からより綺麗な石器を
系統立て、まるで昆虫の標本のように美しく並べられている。

この館のキャラクターにもなっている尖頭器。A地点出土。
初めて来た時にこの石器に惚れてしまった。その時もスケッチを
試みたのだけれど中途でバランスを崩し上手くは描けなかった。
3度目のこの日は最初からこれを描こうと臨んでいた。気迫の
こもった渾身の、という具合ではないかもしれないけれど2度目と
いうこともあり楽しくスケッチすることが出来た。お気に入りの
一枚が増え、楽しい時間を過ごすことが出来た。



なかなか見ることのない大きな石器は両面加工の巧みさ、そして
そのカタチが実に素晴らしい。これを製作した人は間違いなく
センスのある人に違いない。これが実用品だったのか、別の何か
特別な用途があったのかは不明。誰しもがこの程度は製作できたのか、
特定の職人的技のあるものだけが作ることが出来たのだろうか?
作りなれれば誰でも必要な道具としての石器は自分で調達できた
だろうと思われるけれど、一部には職人が集団を成していても良い
ような気がしてしまう。集団生活、社会生活はやはり認められない
のだろうか。


石器を眺めにまた訪ねたいなと思う。








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